天職

一橋大学の卒業式(H27.03.20)において蓼沼宏一学長が内村鑑三の言葉を引用しながら下記のように述べている。

『皆さんには、いろいろな期待を申し上げましたが、みなさん一人ひとりにとって、これからの人生は「天職」を見つける旅路だと言えるかもしれません。冒頭に私は皆さんに幸多かれと祈りましたが、天から与えられたと思える職を見出すこと、自分が自分らしくあり、社会で生き生きと活躍できる場を与えられることほど、幸せなことはないでしょう。

 

その天職について内村鑑三は「如何にして我が天職を知らん乎」において、次のように述べています(一部省略)。

天職を発見するの法は今日目前の義務を忠実に守ることであります。天職は之に従事するまでは発見することのできるものではありません。予め天職を見附けて置いて然る後にこれに従事せんと思う人は終生、其天職に入ることの出来ない人であります。

 

皆さんは、これからそれぞれの選んだ職に就いていきます。はじめから天職についたと思える人は、ごく稀れです。内村鑑三がいうように、日々の職務を忠実に実行する中で、徐々に天から自分に与えられた使命が何であるかが見えてくるものなのではないでしょうか。』

 

母校の同窓会報の入学式、卒業式の学長挨拶記事において、これから学ぶ人、巣立っていく人への慈愛にあふれたメッセージを見る。僭越ながら自分も情報システム、経営企画、人事、事業推進(子会社)と経験していつもこれが自分の天職と思ってやってきた。子会社では採用の企業説明会では学生たちに「やりたい仕事に就くことよりも就いた仕事を好きになる」よう語ってきた。

 

当ホームページのふじのくに論文塾の中の「キャリアの自己分析にもとづく能力開発の要点」は天職発見のプロセスが書かれているのでお読みいただければ幸いである。

天職(続き)

同じく平成8年の入学式での阿部謹也学長の言葉である。

 

『私自身一橋大学において二人の優れた教師に出合い、その出会いが私の学問の出発点になったのであります。その一人は卒業論文のテーマを決めかねていた私に「それをやらなければ生きていけない問題を探せ」と言ってくれました。それは容易な事ではありませんでしたが、そのような問題を探そうと努力する中で私の学問の道がついてきたのだと思います。この課題を私はこれまでの人生をかけて追い求めてきました。この一言がその後の私の学問の道を決めたと言って差し支えないと思います。簡単に実現できないような課題を立てることが大切です。一生かかって解決し得るような課題を抱え、それを中年になっても追い求める姿勢が生まれてくるのです。』

 

私は40歳で会社が用意してくれた40歳ライフプラン研修をうけ、45歳で中小企業診断士資格を取得し、いつかは地元の中小企業のお役にたちたいという考えをもっていた。阿部学長のことばは50歳をこえたばかりの私の背中を押してくれた。現在、古希を超えたが一生かかって追い求める姿勢は続けたいと考えている。

ノーサイドゲーム(GM)

 

池井戸潤氏作の「ノーサイドゲーム」はラグビーチーム「アストロズ」の再生の物語である。この物語には、①かつての名門で、今は入れ替え戦を戦うほど凋落しているアストロズを復活させ強敵サイクロンを打倒する、②親企業の役員からお荷物扱いされているアストロズの事業基盤を強化する、③親企業ときわ自動車の中堅商社買収問題、主導する役員、反対する役員の勢力争い、この三つのストーリーが絡み合って展開される。私はGMの苦闘、成長の物語と見たい。

 

主人公である君嶋隼人が経営戦略室から横浜工場総務部長(アストロズGMを兼ねる)に左遷されたときからこの物語は始まる。なぜ自分がという思いに島本社長は「ゼネラルマネージャーに求められているのは、ラグビーの知識やスキルじゃない。いわばマネジメントだ、君嶋くん。君こそ適任だと思うね」と送り出す。

 

ラグビーには何の興味もない君嶋であったが、持ち前の使命感、行動力を発揮していく。低迷していた名門大学を3連覇に導いた柴門琢磨を監督に招へいし、サポーター拡大に向けて地域へ情報発信、ラグビースクールの開催等でホームゲームの集客に成果をあげる。意に沿わないGM就任だったが、「俺はラグビーが好きだ」というまでになる。

 

本作品はわが国トップリーグの問題、GMのあり方を提起している。ワールドカップ2015で日本代表の活躍で一時盛り上がったが長続きできなかった。地方での試合ではさびしい集客である。

 

GMが関わるステークホルダーは監督・選手・スタッフ、親会社の経営者・社員、サポーター、リーグ組織、メディアと幅広い。GMの役割はチームを強くできる戦略と指導力を持った監督を決める、監督が腕を振るえるようバックアップする、会社の支援を引き出す、入場者・サポーターを増やして財務基盤を確立する、トップリーグを盛り上げることである。「ノーサイドゲーム」によって一つのGM像が提起された。トップリーグの活性化を期待する。

 

ノーサイドゲーム(ヤマハラグビー)

 

「ノーサイドゲーム」のアストロズの姿は、私が応援するヤマハ発動機ジュビロ(以下ヤマハ)に重なる。ヤマハは親会社がリーマンショック後の経営不振でチームの縮小を余儀なくされ、下位に低迷し入れ替え戦をなんとか乗り切った。翌年、就任した清宮克幸監督のもとチームを立て直し、4年目(2015年)で日本選手権を制した

 

私は清宮氏が監督に就任して二つの変化に気が付いた。一つは選手がトップリーグ優勝を口にしていること(目標を持つ) こと、 二つは戦った試合から課題を見つけていることである。日本選手権で優勝した年、リーグ終盤で神戸製鋼に大敗した。パナソニックや東芝との残りの試合をすべて勝たないとプレーオフに出られない、それを実現した。三村主将(当時)は「神戸製鋼が自分たちの弱いところを教えてくれた」と語った。試合で学んで次に生かすことができた。選手のことばから監督の方針が選手に理解されていることが分かる。

 

チーム力は強化されたが、事業基盤である集客は「ノーサイドゲーム」で君嶋が指摘しているように課題は多い。地域に向けてラグビースクールや選手とのふれあいイベントは行われているが、対戦相手によっては入場者数がさびしい思いのすることもある。パナソニックのように日本代表でも戦力外となる分厚い選手層のチームがあるが、戦力格差は大きい。トップリーグの戦力を近づけて競った試合を増やしたい。手に汗握る試合が増えれば入場者は増えるのではないか。

 

個人事業主という働き方 (タニタ)

 

「健康機器大手のタニタは社員との雇用契約を切り替え、業務委託で作業を依頼する制度を導入。今は本社所属の社員の1割が個人事業主だ。」と日経新聞2019922日付は伝えている。働き方改革において裁量労働制を突き詰めていくと、個人事業主型になると考えているがまさにその先進例が紹介された。厚労省は裁量労働制の対象業務として、専門業務型裁量労働制および企画業務型裁量労働制の二つの類型を挙げている。

 

「専門業務型裁量労働制」は業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務。研究開発、デザイン、ゲームソフト創作、アナリスト、会計士、弁護士等19業務。「企画業務型裁量労働制」は事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象。いずれも業務の遂行方法等に関し使用者が具体的な指示をしないことが運用の要件となっている。

 

裁量労働制は専門職制度と深くかかわっている。定型的業務ではなく専門性が要求されるため、管理者の指揮・指導にそぐわない類型の業務である。したがって仕事の難易度=価値の評価が重要になる。これだけの仕事(アウトプット)をいくら(対価)で行うという契約になる。谷田社長は日経ビジネス誌のインタビューで「当社から新たな仕事を頼むときは、明らかにこれまでの業務と違えば『いくらくらいで追加業務としてお願い』というやり取りが行われています。」と語っている。

 

現在は本社社員230名中1割強の26名が個人事業主として契約している。裁量労働制と専門職制度は深く関係している。個人事業主制は専門能力の身についている社員を前提にしている。退職して契約することは勇気のいる決断であり、提供する価値と報酬(対価)が常に評価される。自らを甘えを許さない立場に置く、背水の陣であり、能力向上、即、価値向上となりプロ意識は高まる 。今後とも注目していきたい。また個人事業主型の働き方が成功する要件、課題も考察したいと考えている。

事業承継

 

浜松で開催された事業承継セミナー(2019.12.10)に参加した。2番目の講師である道上佳弘氏は経営改善計画事業でご一緒し、また自分が始めた論文塾の参加メンバーである。論文塾のテーマも事業承継に関するものだった。この春、公募された事業承継支援事業のブロックコーディネータに採用された。道上氏の事業承継への並々ならぬ思いを以前からして知っていたのも参加の理由である。紹介された事例は建築塗装業、和菓子店、不動産経営の3件であるが、いずれも家業的な経営で事業承継と遺産相続が絡んでいて当事者同士では会話も難しい。道上氏は税理士としての専門性を生かしながら経営者家族に寄り添いながら一歩ずつ前に進めているのが伺えた。

 

3番目の講師は天竜区の商工会の職員(女性)であった。講師の発表では天竜区は浜松市の面積の6割を占めている、すなわち広いということである。人口は28千人、商工業者は1500社と少ないが事業承継の相談受付件数は県内商工団体で2位と多い。相談企業は地域に根差した商工業者と推察する。商工業者の廃業は地域住民へのサービスの利便性低下につながる、職員は巡回において「何気ない会話の中から会員さんの事業承継支援の必要性を感じて、自然に相談会を紹介するようにしている。」と報告した。あの広い地域を日々、巡回し会員のニーズをくみ上げているのを聞いて胸が熱くなった。

 

道上さん、商工会職員さんも強い使命感をもっていながら自然体で相談者に接している。静岡県西部には心強い支援スタッフの存在することを確信した。

 

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